ワタリガニとことわざ
カニは、美味しい食材として私たちの生活に密着しているため、ことわざに多く登場します。
賢くない人を揶揄(やゆ)する言葉として「月夜のカニ」があります。これは、月夜に獲れた漁ったカニは肉が少ないといわれているから。俗説によれば、カニは満月の海に映った自分の顔を見て、あまりにも無器量なことを落胆して肉が減るのだというのです。
世界的に見ても「月夜に獲れたカニは肉が少なく味が劣る」といわれていますが、わずか一夜の月光の下でカニが何かの反応を起こして肉が落ちるなどということは実証されていません。このような説が流布されるようになったのは、夜間に遊泳する習性の「ワタリガニ」が月夜に人の目に触れやすく、泳ぎ疲れて身が細ると考えられたのか、満月または新月である大潮(おおしお)のときに産卵を行なうメスのカニは痩せているのではないかと想像したのでしょうか。
「カニは甲に似せて穴を掘る」というのは、自分の体が入れるだけの穴を掘るカニに例えて、身の丈に合わせた願望で満足するようにとの戒めです。「カニの死に挟み」は、死んでも離さぬ強欲のこと。「あわてるカニは穴に入れぬ」は、カニは危険を感じると急いで穴に入るが、慌てすぎると入れなくなることから注意せよという戒めを示します。「カニは食ってもガニ食うな」とは、カニを食べる時の注意で、ガニ=エラの部分は美味しくないから食べるなということ。「カニの横ばい」は、他人から変に見えても、本人にとってはそれが一番適したやり方であることをいいます。
民話の「猿カニ合戦」で、カニはおにぎりと柿の種を猿に無理やり交換させられ、タネが成長して柿の実がなると、ずる賢い猿は自分が食べるだけでカニには全然やらず、青くて硬い柿の実を投げて、カニを殺してしまいます。カニの敵討ちに臼、栗、蜂が参戦して、カニの無念を晴らす筋立てテスが、カニが登場する理由があるのです。カニは柿の種を植えると「早く芽をだせ柿の種、出さなきゃ鋏(はさみ)でちょん切るぞ」と歌いますが、これは古来より伝わる「成木(なりき)責め」という豊穣の祈願で、カニのハサミが木の成長を促すと伝えられています。 |