土井中照がお送りする「ミラクルワールド=愛媛」のご紹介です。
歴史や民俗、食材、郷土料理、名産品、パワースポット、県民性など、びっくりする情報をお届けします。

「よもだ」と「はせだ」と「ほどほど主義」

愛媛県民の夢

金銭の余裕ができたら「道後温泉の近くに居を構え、銀行の利子で、俳句三昧の生活をおくりたい」と願うのが愛媛人の夢だといいます。このことからもわかるように、愛媛人はほどほど主義。非現実的な夢を描かず、身の丈と同じくらいの夢を実現しようとします。現実主義ともいえますが、ちっぽけな夢、ほどほどの夢で満足するのです。

また、身近なところから成功者がでると「あの人物は昔こうだった、ああだった」と悪口をいい、その人の欠点を探し出して得々としていることも多く、極端にいえば成功した人は自分と大して違わないと思いたいのかもしれません。愛媛県民は成功すると、陰口を叩かれる故郷に帰ろうとはしません。警察に向くというのは野球のようなチームプレイが得意な愛媛人の一面をあらわしているようです。

正岡子規が見た愛媛県民

正岡子規は『筆まかせ』の「世界と日本、日本と四国」という小文で「四国人(中略)はなかなか敏捷なるものにて殊に模倣に巧なることは古来より四国猿の名あるを見ても知るべし。学校などに在りてはかなりにやれども、学校を出ずれば小成に安んじ、一たび挫折にあえば忽ち業を廃するに至る。故に大業をなし大名を掲げる人更になし。しかれども警察事務の如き、即ち巡査の如き役位をつとめ得ぬものはひとりもなき故、従って巡査には善きもの多く、東京を除きては他府県下に比なしという」と記しています。

子規は、愛媛県民のことを模倣に優れるが挫折に弱く、天下に名を轟かせる人物が少ないと四国人を嘆き、警察官のように規律のある職業に向くと断じています。子規の指摘のように、粘りが少なく小さな成功をもってよしとする人たちが多いのもまた事実です。

「よもだ」と「はせだ」

伊予弁に「よもだ」という言葉があります。仲間内で馬鹿なことをする人のことを指します。「四方山話」があれこれとつまらない話をすることを指すように、とるにたらないいたずら者をいうのです。

藩政時代、大がかりないたずらでは罰せられました。しかし、限定された範囲の中でのいたずらや仲間うちでのおふざけなら許されます。基本的にコップのなかの嵐、予定調和のいたずらなのです。ですから「よもだ」は「出た釘を打」たれる存在ではありません。体制のなかに安住するどこか憎めない人間像となります。日常を大切にして道を踏みはずさない愛媛人の代表なのです。

「はせだ」という伊予弁も愛媛らしい言葉です。「仲間はずれ」といった意味で、仲間うちからはみだした人を差別します。そのため、愛媛県民は世間からはみださないよう、まわりを確かめ、焦りのみえないのんびりとした生活をおくるのです。

 NHKが平成八年(一九九六)に行った調査で「すぐれた人とそうでない人がいる」という設問に対し、「そのような区別ができない」とした人が全国六位という結果だったのは「よもだ」と「はせだ」の意味をよくあらわしています。

現実をしっかりと見すえると夢は小さくなります。スケール感のある人物はなかなか育ちません。「愛媛からは大人物が育たない」とされる由縁です。しかし、こうした官僚体質のためか、高級官僚になった愛媛人は全国十位、東証一部上場企業の役員になった愛媛人は全国6位という結果です。

 大きな夢を持たず現実に目を向ける愛媛人は、成熟した社会のなかでは重宝される人材なのでしょう。大きな組織のなかで出世するにはほどほど気質や官僚体質のこつこつ人間である愛媛人がいいということなのかもしれません。