大洲のいもたき
肱川の河原では、秋が近づくと、「いもたき」がはじまります。鍋に里芋、鶏肉のぶつ切り、油揚げ、蒟蒻、生しいたけを入れ、ダシに砂糖、醤油を加えて煮る「いもたき」は、旧暦8月15日の仲秋の「芋名月」にふさわしい料理といえます。
「芋名月」とは、里芋の子を皮をつけたまま蒸し、三宝に盛って供えることから名づけられました。里芋が日本に伝わったのは稲作のはじまりと同じ頃で、奈良・平安時代には重要な作物となっています。大地からの収穫の感謝を月に捧げるこの風習は、九世紀後半から十世紀ころにはじまったといわれます。
大洲市特産の里芋は、長く煮ても煮くずれせず、口の中でとろける旨さがあります。品種は「女早生」といい、やわらかくねっとりとした食感、きめが細かく滑らかな口当たりが特徴。特に「勾玉(まがたま)」と呼ばれる芋は、味も姿も上品な逸品です。里芋の美味しさは、川岸の人々の苦労のあとを物語ります。肱川の洪水によって運ばれた肥沃な土が、大洲の里芋を美味しくするのです。
藩政時代に行われていた「お籠り」と呼ばれる親睦行事が始まりとされ、約300年の歴史があります。養蚕が盛んであった名残りで、白玉団子を繭の形にゆでて加える風習も残っています。肱川の河原でゴザを敷き、名月を愛でながら「いもたき」の鍋を楽しみます。 |