土井中照がお送りする「ミラクルワールド=愛媛」のご紹介です。
歴史や民俗、食材、郷土料理、名産品、パワースポット、県民性など、びっくりする情報をお届けします。

焼き豚玉子飯

客に出すよりも旨いまかない飯

今治の中華料理店には、他の地域ではあまり見かけない「焼き豚玉子めし」というメニューがあります。しかも、中国人コックのお店やスーパーの惣菜売場にも並んでいます。

つくり方はいたって簡単。ご飯の上に焼き豚のスライスを置き、その上に半熟の目玉焼きをのせ、焼豚をつくるときにできる醤油ダレをかけます。甘いタレに卵の黄身という、こってりした味ですが、腹一杯になるボリュームと、一度食べたら忘れられない旨さに、学生や若者の人気を得ています。

卵焼きの黄身を潰してご飯とかき混ぜ、ガツガツと食べるのが通だといいます。オツにすまして上品に食べる料理ではないということでしょう。

ルーツはまかない飯

もともとは今治市の中華料理の名店「五番閣」の「まかない飯」だったといい、調理人たちの間での人気メニューでした。「まかない飯」は、料理店でつくられる料理人のためのご飯です。残りものや常備された材料をもとに安くて美味しい料理を手早くつくることは、従業員が段取りや予算を考える修行にもつながります。

飯を盛り、材料を乗せただけで完成する「丼」は、「まかない飯」にぴったりです。単品だと、質素な内容になるのですが、「丼」だと豪華な料理にも変身します。
「丼」は、文化年間(1804~18)に日本橋で芝居小屋経営の大久保今助が、温かい鰻を食べようと蓋のある丼のなかのご飯に鰻を入れて持ち歩いたのがはじまりと『俗事百工起源』にあります。

発展させた兄弟弟子

「五番閣」の人気まかない飯をメニューに取り入れたのが重松飯店。常連は、重松飯店を略して「シゲハン」と呼びます。また、兄弟弟子だった「白楽天」も同時期、メニュー化しています。

「重松飯店」は「焼豚玉子飯」という直球ネーミングでしたが、「白楽天」は中国語のメニュー名だったといいます。結果、学生たちの間で「重松飯店」の「焼豚玉子飯」は人気を呼びました。「五番閣」ゆかりの店のメニューだった「まかない飯」は、次第に他の中華料理店で出されるようになりました。中華料理とはいいにくいメニューが今治に広がったのは、このような理由があるのです。

「焼豚玉子飯」は、ボリュームたっぷりで低価格。「早い、旨い、安い」が大好きな今治人の気風によく合った料理なのでしょう。