土井中照がお送りする「ミラクルワールド=愛媛」のご紹介です。
歴史や民俗、食材、郷土料理、名産品、パワースポット、県民性など、びっくりする情報をお届けします。

宇摩のやまじ風

「やまじ風」とは

四国中央市宇摩に吹く「やまじ風」は、山形県の「清川だし」、岡山県の「広戸風」とならんで日本三大局地風と呼ばれています。法皇山脈の急な斜面を吹き下ろす「やまじ風」を、地元の人々は「狂風」「貧乏風」といい、台風のシーズンと重なると最大風速は秒速40mにもなるのです。

春や秋に多く吹くやまじ風は、フェーン現象を伴うため、急に気温が上がります。

「やまじ風」が吹く前には山鳴りがするといい、豊受山と赤星山に「けた雲」という特殊な雲がかかり「誘い風」という北寄りの風が吹いてきます。「けた雲」が高くなると、宇摩平野では風向がめまぐるしく変化して砂塵をまき上げる「まいまい風」が起こり、その「まいまい風」が終わると、やまじ風が本格的に吹きはじめるといわれています。最後は「かわし風」「返し風」と呼ばれる北西風に変わると、風は穏やかになっていきます。

やまじ風の被害

 この地方では、屋根の上に石塊を置いた家屋が多く見られます。昭和26年(1951)のルース台風では、宇摩地方だけで320戸が全半壊しました。翌年にはやまじ風で、川之江中学校の校舎が倒壊する事故も起きています。また、走っているトラックが横転するという事故も起こります。

そのため、農作物も風の被害を避けるため、土の中にできるサトイモが名産となっています。里芋の栽培は早生・中手・晩生の三種類に分けて行われ、風害を最小限にとどめるための工夫がみられます。そのために開発されたのが「伊予美人」という里芋なのです。

やまじ風の風穴

法皇山脈の中に、標高1274mの豊受山があります。その山頂には長さ60~70mの洞穴があり、風の神が住むと信じられています。「やまじ風」は洞穴から吹き出してくるといわれ、この洞穴を風穴神社として祀っています。

近隣の豊岡町大町、富郷町豊坂の両地区の人々は、毎年旧暦の6月と9月、豊受神社の祭礼の際に、夏には小麦、秋には米で作られたお供えの団子365個をこの風穴に投げ込み、「やまじ風」の被害がないよう祈願するのです。

豊受神社の縁起書には、白鳳6年(672)に豊受大神をお祀りしてから、1300年以上もこの神事が続いてきました。「やまじ風」は、それほど恐ろしいものだと考えられてきたことがうかがえます。